グッバイ・マイ・ワーク

おっしゃー、おれは親から譲られなかったもので生きてくぞー! その方がロックだから! と思って文章を買いたり、音楽を演奏したりしてきて、10年経った。全然だめだった。そもそも途中で力尽きて、部屋の隅で体育座りしている時間の方が長かった。しかし親から譲られなかったものが生きていくうえで重要だったのは間違いなく、その辺の慧眼はおれマジやべえしパなかった。末は博士か大臣か。ところで、一口に親から譲られなかったといっても「親から譲られなかったけど身につけたもの」と「親から譲られなかったし身にも付いていなかったもの」があることは聡明なみなさんなら既にお気づきであろうと思う。そして明哲さに置いて右に出る者がいないみなさんならお分かりの通り、おれが人生をなんとかしようとしてたのは前者の力であり、本当に必要だったのは後者の技であった。

つまりコミュニケーション能力である。社会性である。小学生の時のことや保育園のときのことをいたずらにフラッシュバックさせてため息をつきながらカレー皿や圧力鍋をあらっている場合ではなかったのだ。コミュニケーション能力と社会性を早急に身につける必要がある。ご飯を食べるときは新聞を凝視する必要がある。中間試験を受ける必要はない。ハローワークに行く必要がある。ハローワークで面接対策を荒須さんにしてもらう必要がある。失業保険が切れる前に仕事を見つける必要がある。

さてまあどうやって社会性やらコミュニケーション能力を身につければいいのか。荒須さんの面接対策だけで身につけるとしたら時間がかかりすぎてしまう気がする。もっと手っ取り早く、安く、美味い、牛丼のような方法はないものだろう。面接であがらないように初対面の人の前に立って声を出したり、スケジュールを調整してアポイトメントをとったり、そういったことを一度に解決できる方法は! つづく! (つづかない)