おれと二択

けっこう違うものなのに、同じもの扱いされているみたいなものがある。例えば紅茶とコーヒー。そばとうどん。ごはんとパン。

おれの彼女はコーヒーが好きで、コーヒーメイカーでずごごごとコーヒーを作っている。知ってますか? コーヒーメイカーでコーヒーを淹れるときはすごごごって音がするんですよ。おおよそ人の飲み物を作るときに出る音とは思えない、ずごごご。とは言え、料理の音なんてそんなものかもしれない。最近、厨房に立つことが多いから分かるけど、じゅばーとかぞごーしゅとかしゃかんしゃかんとかそんな音がして料理というのはできるのだ。たとえ全自動洗濯機とか蒸気機関車みたいなずごごごでもおいしいコーヒーが飲めるに違いない。

で、ずごごごを飲んでる彼女がコーヒーだとカフェインを摂りすぎるので紅茶にしましょうという記事をファッション誌で見つけ、「別物じゃん!」と憤っていた。言いたいことは分かる。味がぜんぜん違う。おれだってコーラを飲む代わりにサイダーにしましょうという記事を見たらその雑誌をビリビリに引き裂き、編集部に抗議の電話をかけ、スポンサーに苦情のメールを送り、BPOに審議を要求する。BPOの管轄はテレビだというのは分かっていてもそうする。

うどんとそばも「違えのになんでみんな比べたがるのよー!」と友達が言っていた。粉から違うからね。だったらそうめんもラーメンもスパゲッティもビーフンもフォーも候補に入るじゃんね。

結局のところ、見た目とか必要とされる場所やタイミングが似ていると、本質はどうあれ同じもの扱いされてしまうのだ。恐ろしい。それでもそういう世界で生きていくしかない。

しかし、それで損ばかりしてるかというとまあそんなことはない。こないだ蒼井優の家でチェスをやってたらすっかり暗くなったときに「夕飯食べていくよね? そばとうどんどっちがいい?」と聞かれ、あの、やきうどんってだめですか? と質問に質問を重ねたら「あー、それは思いつかなかった。ていうか聞いたらめちゃくちゃやきうどん食べたくなった。君って天才」となってチェックをメイトしまくって「今度はバックギャモンで勝負ね」と次の約束を取り付けたし、おととい広瀬すずの家に遊びに行って「ごめんなさい、あたし炭酸苦手で、オレンジジュースしかないです」と言われたときもおれは大丈夫、むしろ水でいい。と言ったら「よかったー、いつもコーラ愛に溢れているから怒られるかと思ったあ。ていうか水ですか。コストパフォーマンスに優れてて素敵!」となって今度一緒にレオパレスで壁紙を選ぶことになった。すずは牛柄とにわとり柄で悩んでるらしい。なんでその二択なの? って聞いたら「だってビーフorチキンってよく聞かれるじゃないですか」だってさ。女優やってる人はやっぱりぶっとんでる。