おれと深夜百太郎

ひとことで言うとおれの好きな作家が深夜百太郎というツイッターアカウントで掌編を書きはじめて怖くてオススメだよっていう話。

一番好きな小説家は筒井康隆だ。なぜなら最強だから。具体的にどう最強なのかというのは又の機会に話すとして、だったらそんなこと書かなきゃいいじゃないか、でもねおれはいつのまにかこういうことを書かないと文字が書けなくなっているんだよ。なにそれ、怖い。呪い? カルマ? 病気? あー病気かも。それはそれとして。

他に好きな作家に舞城王太郎がいる。

舞城は乙一桜井亜美と撮ったオムニバス映画「ぼくたちは上手にゆっくりできない。」のツイッター宣伝アカウント・終世終太郎(ついよついたろう)で、文字ラジオと称して夜な夜な、小説みたいなものを書いていた。たしか本人だとは明言はされてなかったんだけど、もうこれはクワトロ・バジーナぐらいシャアで、タキシード仮面ぐらい地場衛なのであった。なぜかそこでは舞城の変名である愛媛川十三が愛姫川十三に、舞城王太郎が舞城玉太郎になっていて、意味分かんないよね、なんでそんなことするんだろう、文章は分かりやすい読みやすいほうがいいじゃんね。呪い? カルマ? おい、てめえが三島賞作家と同じだなんて戯けたこと書いてんじゃねーぞ。それはそれとして。

映画の公開が終わった現在、このアカウントのツイートは感謝の言葉だけを残して全消去されている。なんともったいない! 舞城はけっこうそういうもったいないことをやる。評判がいいのに単行本未収録の短編なんてざらにある。おれはファンではあるけれど、舞城の1編を読みたいがために文芸誌を買うほど本棚と財布に余裕はない。まあそれはワガママかもしんない。シングルCD買わないマンみたいな。でもコンピレーションアルバムでしか聞けない曲がトータルでアルバム2、3枚はあると考えるとやっぱりそこまで追いかけるのはちょっとつらい。

終世終太郎のアカウントでは、映画の宣伝と愛姫川十三のところでバイトをしている人の近況というていのちょっと怖い話、あと舞城玉太郎が書いた『乙一』、『桜井亜美』、『終世終太郎』というタイトルの掌編が載っていた。ちょっと怖い話は『添木添太郎』とか『ンポ先輩』ぽい感じ。神社とかお祓いとか出てこない洒落怖のようなものだと思ってくれればかまわない。人名をタイトルにした掌編は「好き好き大好き超愛してる。」の中に出てくるSFのようなファンタジーのような話だった。

最近の舞城はミステリとかメタフィクションよりも、ちょっとスピリチュアルなじわっと「なんだこれ、怖……」ってなるところにアンテナがむいてるらしく、今度出す『淵の王』という単行本も『新潮』に載っていたのを読んだ人の感想によると怖い系らしい。

で、深夜百太郎なんだけど、おおやっと話が戻ってきた、これは『淵の王』の発売に合わせ、怪談(カウントは◯太郎)を毎日23時に配信する百物語のアカウント。前日、前々日の2つはそれほどでもなかったけど、今日の三太郎「地獄の子」がゾクッと怖い。話の最後にアップされる白黒写真なんか脳内補正で勝手に心霊写真に見えてくる始末。

きっとこの深夜百太郎も百語り終えたらすぐに消してしまう気がするし、目が話せないのだが、舞城で九十九というと、まさかあの名探偵出す? と気になってしまい、落ち着かない震えが止まらない。