おれとマキオ1

マキオはおれと同じ人間設計学部の1年生で、おれのような人種を下に見ていそうな派手で華やかな奴だった。もちろん、そんな人間には近寄らない。なんだったら先回りして、こちらから嫌いとまで公言する。特に自分が何か言われたわけではないのだけれど、攻撃は最大の防御。やれる前にやれ。戦争は速さだ。などと卑屈と屈折のコンクリートでできたベルリンの壁を作り、しばらく挨拶すらしなかった。が、夏休みにサークル合宿で行われたスタジオライブでおれのギターに貼ってあったグミのステッカーにマキオが反応し、あっさり壁は崩壊した。
そのステッカーはデンマークハリボー社が出しているサルミアッキ味のグミのもので、おれはそれが特に気に入っていた。普通のコンビニでは売っていないので通販を使って手に入れ、まるで喫煙者のタバコのように外出時も常に一袋は持ち歩いていた。しかしサルミアッキは世間ではゴムの味、世界で最もまずいお菓子と謗られ、物珍しさから欲しがる友人にあげるも、口に入れた次の瞬間、「こいつどんな味覚してるんだ……」と畏怖、驚愕ならまだしも、よくて幻滅、甚だしくは絶縁などいう憂き目にあう悲しきスイーツであった。スイーツというほど甘くもないのだが。