おれとキテレツ

こう書くと、まるでコロ助みたいだと思ったが、コロ助の一人称はワガハイだったナリ。それはそれとして。昔見ていたアニメ、「キテレツ大百科」のことを書く。
世の中にはキテレツ大百科が最終回を迎えたらと思ったら、翌週にまたキテレツ大百科が始まるという、どっちが奇天烈だかわからない県があったと聞く。それもそれとして。おれはけっこうキテレツ大百科が好きだ。
実際のところ、情報ソースとして使ってはいけないでお馴染みのウィキペディアによると、キテレツ大百科が終わったのはもう18年前の話なので、今のヤング・ピーポーには通じないかもしれない。え、じゃあ今の高校生はキテレツ大百科知らないの?! うっわ……背筋に冷たいものが走らないでもない。さ、再放送とかで知ってるかもしれないよね。おれも再放送見てたし。
ところで、どうしておれがキテレツ大百科をけっこう好きかというと、同じく藤子・F・不二雄原作の「ドラえもん」では、野比家以外の両親がどうなってるのかそういうところがあんまりわからないのに対して(絶対ぱっと思い浮かばないジャイアンのお父さん、しずかちゃんのパパなど基本的に父親の扱いが悪い)、ブタゴリラ、みよちゃん、トンガリの家族がちゃんと描かれていたり、基本的に1話完結でありながらゲスト回として度々、ブタゴリラ、トンガリそれぞれのの彼女役として、たえこ、さつきが出てくるなど、周りにもスポットライトが当たるからだと思う。そういえば6浪の末に経済学部に入学したという勉三さんにも彼女がいた。え、あいつらみんな彼女持ちなの?! あと主題歌もよかった「すいみん不足」とか「お嫁さんになってあげないぞ」とか「メリーはただのトモダチ」とか。
いくらドラえもんが好きだとはいえ、懸命にも主人公にはなれないと早々に諦めた少年時代のおれにとっては、運動も勉強もできないけど、結局、絶えずスポットライトを浴びているのび太はちょっとズルい感じがしてたし、出木杉くんハブんじゃねーよって思ってたし、そういう意味で主人公チーム以外の人間も描写する方針の物語展開は、ズルくなくて好きだった。
そういえばなんでキテレツ大百科の話をしたかというと、「異次元刀」という発明品が出てくる話が、子ども心に超怖かったなーってふと思い出したからです。迷路からみよちゃんだけが出てこなくて、異次元にいっちゃう話。そんで異次元人に会う話。出てこれなくなる話。かどうかはDVDで。異次元人、そんなに悪いやつじゃないんだけどね。デザイン怖い。ラストも怖い。つーか全体的に怖い。
なるほど、それで主題歌がすいみん不足なのか! ってそれほどうまくないですね。さよなら。

痩せる思い

 この間から痩せようと思っていた。ほいで、おれの中で一番ポピュラーな運動がマラソンなので、走ろう、走ってこまそう。と決めた。まあ、ジムやプールに通う金もないしね。靴は学生んときのがあるし、服は適当にジャージとかを着ればいいし、決めた。で、先週からちょくちょく走っている。
 でも飽きっぽさならどんなアイドルの中でもセンター、との誉れも高いおれだ。且つ、食欲以外は大した欲望もないのでバイトなんかも買いたいもの買っちゃったらもういいやーってなって、ぺーって辞めてしまうのがおれだ。そんな人間がダイエットなんて続くはずがない。せめて、ノルマ的に実行すべき目標を掲げるべきだと思った。やるべきことを決めたら、やる前にやめてしまうような人間になってはいないと思う。大目に見て。甘く言って。話半分で聞いて。ので、じゃあ10kgとかどーんと痩せよう。と決めた。
 して、10kgってどのぐらい走ったら落ちるのだろう。計算してみた。体重によって違うらしいが、おれの場合は1kg落とすのに約170km走る必要があるという。つまり、1700km走れば体重が10kg落ちる。ほう。で、1700kmっていうのを調べてみれば、大体東京・博多間の直線距離の往復がそれぐらいだそうだ。あほか。じゃあ、5kg落とすなら博多で暮らせばいいのか。どんたく見て、ちゃんぽん食って、ナンバーガール聞けばいいのか。重いDE IN MY BODYってやかましいわ。さすがに意味がわからない。まあ10kgをランニングで落とすのが過酷というのはわかった。
 けど、でも。時間というのは積み重ねてなんぼである。塵も積もればよい。石の上にも3年。ブスを集めて40幾つ。仮に1日5km走るとしたら、320日で10kg落とせる!! ……長い。じゃあ、1日10km走れば160日で落とせる。160日は半年弱。それも長い。じゃあじゃあ、1日20km走れば! って毎日そんだけ走れたらそもそも太ってないって。嫌になったのでコーラを飲み干した。もうすぐ秋。

ベイビーベイビーベイビー

電車で赤ちゃんがこっちをみるときってままある話だと思うんですよ。あ! 赤ちゃんだけにママある話だと思うんです、ってやかましいわ! いやもちろんスタンドアローンで赤ちゃんがこっちを見ていたらそれそれでホラーだったりしますが、今回は普通のママに抱かれたベイビーの話です。
で、赤ん坊こっち見とる。そうすっと何らかのリアクションをさせてやろうと思うじゃないですか。具体的には笑わせようと。
だから変な顔をするわけですよ。おれは生まれてこのかた始終変な顔してるけども、このときのための、赤子用にファニーな福笑いってやつをするわけです。顔を膨らますとかね。
もちろん顔を膨らませるといっても膨らむのはせいぜい頬ぐらいなものなんですが。顔以外なら他にもあるけど、そこを晒すといろいろと都合が悪い。ママが二人目のベイビーを欲しがっちゃうからね。がっはっはっ。
もちろん、こんな考えはおくびにも出さず、先ほどからキープスマイリってる。膨らますだけじゃ芸もないので凹ませたり、くしゃくしゃにしてみたりもしてるが、どうした赤子。無表情の極み。あれか。まだ貴様には感情というものが芽生えていないのか? ならば仕方ない。そろそろ君のママンがおれを見る目が変質者へのそれと化しているからね。
まあ時間も頃合いです。山の手線は新宿につきます。表情を福笑いフェイスからいつもの物笑いフェイスに戻して、さあ降りよう降りよう。フェイスはこんなもんだけど、物腰はスマートにいきたいよね。さっと扉を通る瞬間、すれ違うお姉さんのヒールがおれのビーチサンダルを貫く。
そのおれの姿をみて赤子はようやく笑った。

数字のひみつ

数字っていうとアラビア数字で1から9までありますが、なんとなく「主人公」になるのは奇数な気がします。

1の特に秀でたところがないけど修行してめっちゃ強くなる感じ。3の普段は明るいけどいざという時に頼りになる昼行灯感。5の元気溌剌、熱血爆熱ど根性感。7のクールで知的なやれやれ系感。9の最強の力をもつ、段々パワーが解放されてく系もしくは全ての数字のエレメントをもつ完全系感。

翻って奇数はサブというか脇役というか、バイプレイヤーが似合うのかなと。2の親友感。4のヒロイン感。6の頭は良くないけど気は優しくて力持ち感。8の敵か味方かわからない感。

まあ全部が全部共感を得られるとは思ってないんですけど(奇数主役説っていう前提ですら思ってない)、各数字自体に意味は無いのに、なぜか感じるキャラクター性というものは誰しもにあると思います。ここで「ない!」と言い切れる方はゼントランディの可能性があります。周りの人間が自分よりも妙に小さいと常日頃から感じていませんか? ヤック・デカルチャー

あとあれ。足し算でしっくりこないのが7+8=15。ちょっと少ないとは思いませんか。17ぐらいあげてもいいと思うんですよ。かといって8+9=17は割と順当だと思うんですけど。7と8っていったらもう大御所あるいは実力者じゃないですか。それがあわさってるのに15て。3×5と同じなんですよ? 完全体になったセルがピッコロに負けるみたいな肩透かしを食らった気分です。それかブウ編でサイヤ人にならないでも強くなった目が変な悟飯が全然活躍しなかったあのモヤモヤに似たものもありますね。

数字じゃないところでいうとアルファベットのLはもうちょっとあとの方に出てきてもいいと思います。逆にSはもっと早く出ていい。でもAとZは不動だね。殊、ABCの美しさとXYZのシティハンター感。たまりません。もっこり。XYZはフィナーレに向けて、全ての謎が解けるような爽快感もあります。

だけどLMNのもたつきといったらない。だいたい見た目が似てるMとNをどうして並べるのか? そんなところに罠をはってどうするんですか! 誰が得をするんですか! ECCですか! AEONの石原さとみですか! まあ石原さとみが得をするんなら、振り上げた拳を下げざるを得ませんが。

や、ぼくは何もアルファベットだけに文句があるわけではありません。ひらがなにも言いたいことがあります。いや、さとみがひらがななのはかわいい。超かわいい。だから泣くのはもうおよし。あ、話が逸れました。今言いたいのは、ひらがなへの文句。強大かつ絶対な存在に対する反抗。レジスタンスです!

まず言いたいのは「ね」と「れ」と「わ」。あ、その顔はひらがなの起源は万葉仮名(漢字)だから似てるとか似てないとかそういう問題じゃないって顔ですね。だったらなんでこんなとこまで読み進めたんですか! こんな話をずっと今日はしてるのですよ! もう先生、今日は話しません。全部黒板に書くので勝手におしゃべりしててください。あ、こんな教師、小学校にいましたよね。生徒にまでスト⁉ おのれ日○組め!○には好きな女優さんの名前を入れてください。ん? わかってるよ、お前の名前を入れるから。収録がんばって! うん、京月冷やしとく。ドラマも録画しとく。あれおかしいなこんな話をするために生まれてきたんじゃないのに。

隠し味

ステルスマーケティング、ダイレクトマーケティングの類に寛容なおれでも、最近、迷惑メールが来まくるのには辟易している。朝起きたら謎の遺産提供、昼ごはんを食べてるときに謎の美人からのお誘い、夜寝る前に脅しが。ああ腹が立つ。なぜ夜に脅されないといけないのか! そんなに夢見を悪くさせたいのか! 謎の美人はなぜ夜に送ってこないのか! だからお前はもてないんだよ!

という話を彼女にしたら「どうせ、そういうサイトに登録したんでしょ? ふん、エロが!」とプンスコ怒って帰ってしまった。コミュ障のおれがそんなところに登録なんかするわけないじゃないか。一度くれたチョコレートをひったくって、自分で食べながら全力疾走をキメる器用な後ろ姿を見ながら、やれやれ。ぼくは追いかけた。

意外な身体能力におれは驚愕した。あいつは運動音痴の筈だったのに。人を抜くときなんかサッカー選手みたいだ。そういえばチョコレートに隠し味をいれたと言っていたが、ステロイドでも入っていたのだろうか。あんまり中学元陸上部をなめないでもらいたい。おれはドーピングは嫌いだ。

あんまり高校元軽音部をいじめないでもらいたい。おまけに途中でやめた根性なしなおれだ。ていうかさー、普通、こういうときに1キロとか走る? いったいどこに行こうとしてるのか。あ、やっと止まった。

「い……いくらなんでも走り過ぎだろ……」
「4粒いれたからね」

グリコは1粒、300メートル。

モテとギター

ギターを始めたのは女の子にモテたかったから。そんなスーパーイージーな理由でギターを始めたパープリンボーイだったおれは結局モテなかった。当たり前だ。ギターをやっているやつがモテるのではなく、モテるやつがたまたまギターをやっているだけなのだ。というかギターでもスポーツでもなんでも、それをやっているからモテるということはなく、基本的にはモテパワーをどれだけ持っているかで結果は決まってくる。それは顔のつくりだったり、スタイルだったり、所作の美しさだったり、社交性だったりいろいろだが、ひとついえるのは人生の早い段階でそれを獲得しなければ、後々、身につけることは難しいということだ。

さて、しかし、モテとは一体どういうことか。モテたことがないので皆目見当がつかない。オムライスを食べたことがないのにオムライスを作ることは無理だ。なのにオムライスが無性に食べたくなるとは、男とは甚だ悲しい生き物だと言わざるを得ない。しかしこうだったら悪い気はしないというシチュエーションを考えてみると、例えば、漫画、アニメ、映画でたまに出てくるクラスの女子の会話。「桃蜜子、酒井南川くんとどうなの?」「いや、あいつとはなんでもないよー」「えー、そうなの? 酒井南川くんってけっこう女子から人気あるんだよ」「そうだよ、桃蜜子がいらないんだったらあたしが酒井南川くん狙っちゃうー!」「きゃー、抜け駆けー!」「きゃいのきゃいのきゃん」とかいう会話に自分の名前が出てくるとモテなのかなって思う。が、あれはたぶん男、しかもモテない男が考えてる匂いがする。プンプンする。始終、マウンティングと空気の読み合い合戦をしている女の子たちがクラスの誰々が誰々のことを気になっているとかいうのは敏感に察知しているに違いない。それがわからないのは童貞だからだ。あっぶねー! 童貞のドリームに乗っかるところだったぜ。

とはいえ、クラスの女子から人気がある酒井南川くんはモテであることに間違いないし、酒井南川くんに彼女ができれば次点である、脛岡くんにモテのお鉢が回ってくるだろうし、脛岡くんに彼女ができればその次の菊藤田くんがモテていくのだろう。そういうモテリレーに加わりたかったのだが、おれは後ろから数えた方が早いどころか補欠として参加できていないまである。そんな場所でギターを弾いていても誰も見てくれないし、聞いてくれないのだ。

グッバイ・マイ・ワーク

おっしゃー、おれは親から譲られなかったもので生きてくぞー! その方がロックだから! と思って文章を買いたり、音楽を演奏したりしてきて、10年経った。全然だめだった。そもそも途中で力尽きて、部屋の隅で体育座りしている時間の方が長かった。しかし親から譲られなかったものが生きていくうえで重要だったのは間違いなく、その辺の慧眼はおれマジやべえしパなかった。末は博士か大臣か。ところで、一口に親から譲られなかったといっても「親から譲られなかったけど身につけたもの」と「親から譲られなかったし身にも付いていなかったもの」があることは聡明なみなさんなら既にお気づきであろうと思う。そして明哲さに置いて右に出る者がいないみなさんならお分かりの通り、おれが人生をなんとかしようとしてたのは前者の力であり、本当に必要だったのは後者の技であった。

つまりコミュニケーション能力である。社会性である。小学生の時のことや保育園のときのことをいたずらにフラッシュバックさせてため息をつきながらカレー皿や圧力鍋をあらっている場合ではなかったのだ。コミュニケーション能力と社会性を早急に身につける必要がある。ご飯を食べるときは新聞を凝視する必要がある。中間試験を受ける必要はない。ハローワークに行く必要がある。ハローワークで面接対策を荒須さんにしてもらう必要がある。失業保険が切れる前に仕事を見つける必要がある。

さてまあどうやって社会性やらコミュニケーション能力を身につければいいのか。荒須さんの面接対策だけで身につけるとしたら時間がかかりすぎてしまう気がする。もっと手っ取り早く、安く、美味い、牛丼のような方法はないものだろう。面接であがらないように初対面の人の前に立って声を出したり、スケジュールを調整してアポイトメントをとったり、そういったことを一度に解決できる方法は! つづく! (つづかない)